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――――キーンコーンカーンコーン…
『あ、予鈴だ。聖、ここにいていいの?次聖のクラス移動だろ。』
「チッ。(今回は説得失敗したか…。)とにかくだなぁ、亀…、いや、和也!!お母さんはあんな男のこと許しませんからな!!」
そう吐き捨てるように言うと、聖は散々騒いで自分のクラスへと戻っていった。
……許しませんからなって、何でお母さん?
そんでキャラのクオリティ低くね?
(しかも今あいつ舌打ちしやがった?)
まぁ、聖からはまた後で詳しく話し聞けばいいか。
そう考えながら、残り一口のパンを口に放り込んだ。
と、その時。
「おーい、かーめー。」
『あ。』
噂をすれば、だ。
声のする方を見ると、今の今まで話題にあがっていた仁が教室の入り口から俺に手を振っている。
俺が気づいたのを見ると、にかっと笑って教室の中に入ってきた。
少し長い黒い髪に、愛嬌のある屈託のない笑顔をふりまきながら、こちらに小走りで寄ってくる。
さっきの聖の話を思い出して、思わず噴き出しそうになった。
(…おいおい、あれのどこがミステリアス?まるで犬みたいじゃん。)
「かーめっ、これから何の授業?」
『…英語。ってかさぁ、さっきお前のせいで俺が……。』
「ん?何?」
…お前のせいで俺が聖に怒られたんだからな。
って言っても、それは聖が勝手に仁を悪く言ってるだけだし、仁には関係ないか。
『…いや、何でもない。で?どうしたの?』
「あ、俺今日数学の教科書忘れちゃったんだよね。だから亀に借りに来た。」
『…え、またー?』
仁っていう奴は何かと毎日物を忘れてくる。
おっちょこちょい、とか可愛いものではなく、ここまでくるとただのバカだ。
(…やっぱ、バカだから何考えてるかわかんないんじゃね?)
『…仁、持って帰ったってどうせ勉強しないんだから学校に置いていけば、っていっつも言ってんじゃん。』
「うん、ごめん。いつかは勉強するかなーと思ってさ。」
『そう言ってした試しがないし。…ったく、教科書なら俺のロッカーにあるから勝手に持ってっていーよ。』
「亀いつもありがとね。あ、そうだ、亀今日学校終わった後暇?教科書貸してくれたお礼に何かおごるよ?」
バイト代もらって、今俺お金持ちなんだよね、そう言って仁がにやりと笑った。
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