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余裕なく押しつける仁の唇に思わず体を固くする。
本気なんだ、さっき言ってた俺が欲しいって話、本気だ。そしてそれをマジでしようとしてる。
どうしようどうしよう、どうすればいい?
「…口、あけろよ。」
『んぐっ、』
少し乱暴な口調になった仁の親指が俺の口の端から中に入ってきて、無理矢理こじあけられ、そこから仁の舌が俺の舌を掻っ攫っていく。
ぬるりとした熱い舌と、唾液がぐちゃぐちゃ混ざる音に、顔がカァッと熱くなり、ただでさえ意識が朦朧としてるのに、もっと頭がまわらなくなる。
『……やめ、っん、』
「っふは、かーわい…。」
熱い。
仁が触れた所全部熱い。
薬のせいなのか、酸素がまわらないせいなのか、頭がクラクラし始めた時、
―――Prururu…
『!!』
部屋の電話が突然この場の空気を切るように鳴った。
そうか、時間延長するかどうかの店からの電話だ。
電話をとらなかったら、店員がこの部屋にくるかもしれない、電話をとったとしても、俺がここから大声で助けを叫べばいい。
どちらにしても、今の状況を抜け出せそうだ。
よかった、助かった…!!
「あー、どうしようかなー。」
仁もそのことに気づいたようで、少し考えた素振りを見せ、俺の方に向き直った。
『?』
「…ここまでするつもりはなかったんだけど。この一回きりで終わりにするつもりだったし。…でも、想像してたよりずっと……うん、これっきりで、なんて俺、亀を手放せなさそう。」
?
一人そうブツブツ話す仁をただ黙って見ていると、突然、俺のシャツを掴み、
―――ボタンを引きちぎった。
『…なっ!!』
そのままズボンにも手がのび、膝までずり下げる。
『ちょっ、マジでやめ…っ!!』
「…この状態で、誰か来ちゃったら困るよね。」
『!!』
そう言うと、俺の両手を片手で抑えつけたまま、仁は鳴り続ける電話を取った。
「はーい。」
『…っ、』
…これじゃ、大声なんか出せない。
こんな格好で、しかも男が男にだなんて…、助けなんか呼べない。
口は自由なのに、いくらでも叫べるのに…。
悔しいけど、俺は息をひそめるように黙ることしかできなかった。
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