暗く長く寒い夜も

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『あ、そうだ、ご飯食べた?俺まだ何も食べてないからさ、今から何か作ろうと思うんだけど、仁も食べる?』 「んー、食べたいけど、お前まだ帰ってきたばっかじゃん。少し休んでからにしたら?」 『いや、いい。俺今すげぇ腹減ってんだよね。すぐ作るから待ってて。』 そう言って、上着を脱いでキッチンの方へと……逃げた。 そんな事したってどうしようもないけど、とりあえず一人になりたかった。 少し一人になって、まず落ち着こう。 そしたら、大丈夫、うん。 そうやってシンクに両手をかけ、頭を項垂れた時、 『―――!!』 突然目の前が、いや、視界全てが真っ暗になった。 『停電…?』 あたりを見回してみても明かりはなく、やはり停電のようだ。 え、何?そんな電気使ってた? 『じんー?そっちだいじょ、うわっ…!!』 一応、と仁がいた方に声をかけようとした所で、後ろから重いものが覆いかぶさる。 重いものっていうか、これは―――仁だ。 「かめー?大丈夫?」 『大丈夫だけど…。』 自分の後ろから覆いかぶさるように仁もシンクに両手をついてるようだ。 …重。 『…何これ、停電?』 「んー、っぽいね。」 『じゃあブレーカー…、』 そう言って伸ばした手が何かにコツンとぶつかった。瞬間、 ―――ガシャンッ!! 何かが音を立てて割れる音がした。 『あ、やばっ』 「ばか、触んなって。そのうち勝手につくだろ。それは後で俺が片付けるから。」 『でも、』 「お前絶対怪我するからダメ。」 『……わかった。』 背中から仁の体温が伝わって、鼓動が、仁の声が体に響く。 それは久しぶりのもので、あまりに心地のいいもので、自然と肩の力が抜けていく気がした。 ちょっとした沈黙、この体勢はいかがなものかと考えを巡らしていた時、 『!』 完全に気を抜いていた。 シンクにあったはずの仁の右手が脇腹から臍の方へと何か調べるようにすべっていったのだ。 『何、』 「お前さ、前に会った時よりちょっと痩せたよな。」 『…前は太ったって言ってたじゃん。』 「だから、その時よりさ。うん、痩せた。やっぱ電話だけじゃこういうのってわかんねぇよなぁ。」
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