67#見張り

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 庭の梅がゆっくりと花開いているのを見て、私は再び目を閉じる。  春はもうすぐそこだが、私は外でのんびりする許可はまだでていないのだ。  目の前では隊士たちが入れ替わりにやってきては、土方に報告を済ませてゆく。  近藤は文机で書状をしたためいているようで、今私にはその広い背中しか見えない。  不器用に、絶えず髪を撫でられることで緩やかな眠りが襲ってくるけど、別に私は眠いワケじゃない。 「外、出たいなぁ」  ぽつりと私が漏らした言葉に書類に目を通していた土方と、近藤の背中、髪を梳く手が止まった。  ここは近藤の部屋――つまり局長室で、何故私が大人しくここにいるのかというと、先日屯所を抜け出した罰なのだという。  今までなら私も山南のところに入り浸っていたのだが、以前の屯所に山南を置いてきてしまったため、好き勝手にふらふら出ていってしまう私を止める名目で、この部屋に留められているのだ。  今度の屯所はかなり広い。  殊、新たな局長室は四人でいても十分すぎる広さがあるので、快適と言えば快適だろう。  だが、私は外に出て、日に当たっている方が好きだ。  もちろん、鍛錬も嫌いじゃないし、平隊士たちに稽古をつけてやるのも、他の連中と稽古するのも楽しい。  だけど、私にとって屯所の外はそれ以上に楽しい。 「ダメですよ、葉桜さん」  頭上のカラカラとした笑い声に、私は嘆息する。  さっきから私の髪を絶えず梳いているのは沖田だ。  近藤、土方、沖田と揃っているのに、この三人からなんて逃げられるわけがない。  以前までは、まだ私を見張るにしても近藤と土方の二人だけだったのが、先日熱が出ていたとは二人をいえ出し抜いてしまったせいで余計なのまで増えた。  しかも、沖田は一緒にいると私にひっついて離れてくれない。  ひとときも側を離れてくれない上に、沖田には私が抜け出せるような隙がまったくない。 「そうそう、約束破った罰なんだから」  先程から書いていた物を土方に渡しつつ、身体ごと私たちに向き直った近藤が笑う。  たしかに、あの白装束で外へ出ないという近藤との約束を破ったのは私だから、その点についての異論はない。 「じゃあ、せめてコレ」
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