67#見張り

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「嫌です」  私は近藤に沖田を引き離してと目で懇願するも、当の本人から笑顔で拒否されてしまった。  この子供(沖田)をどうしてやろうかと、私は小さく舌打ちする。 「土方さんー」  我関せずといった体で書類に目を通している土方は、呼んでも私を見ない。 「じゃあ、俺の方にくるかい?」  近藤の申し出に対し、私はため息をつく。  そういう問題じゃないと言っても、わかってはもらえないだろう。 「ねぇ土方さん、そっち行ってもいい?」  私がもう一度土方に問いかけると、近藤が意外そうに目を開き、不満そうな沖田がぐっと私の髪を引っ張る。 「ぎゃっ、痛いからっ」 「どうして土方さんなんですか?」 「沖田がそーゆーことするからっ」  一瞬沖田の指が緩んだ隙に、私は飛び起きて、そそくさと土方のそばに移動する。  それは必然的に近藤にも近づくわけだけど、私は無視を決め込んでいる土方の隣に座り、寄りかかる。 「邪魔だ、葉桜」  土方の手元には書き上がったばかりと見える書類があり、よくよく読んでみれば。 「届けましょうか、それ」 「ん?」 「容保様への書状ですよね」  内容はただの引越挨拶だけど、私には良い口実だ。見張られているせいで報告にも上がれないから、容保様の具合はどうなのかとか気になってしかたない。  外へ出して貰うためにも好都合だ。 「近藤さん付きでもいいから、ね?」  どんな理由をつけてもいいから、私は容保様に逢いたい。  今どうしてるのかとか、無理していないかとかとっても気になる。  容保様は放っておけばどこまでも無理をする人だから、誰かが見ててあげなきゃいけないと思う。  でも、あの人は会津藩主で、京都守護職に就いていて、とても職務に忠義で頑固で。  具合もよくなっていないのに、こうして土方みたいに仕事している気がする。 「ダメだ」 「なんでよー」 「そんなにヒマならおまえもこれやるか?」  これと言われた別な書類を見て、私は眉を顰める。  出来ないことはないが、これは土方の、ひいては近藤の仕事だ。  平隊士である私にやらせるものではないだろう。  それに。 「やだ、そんなのつまんない」 「じゃあ大人しくしてろ」 「ケチー」
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