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眠りにおちた葉桜を抱き上げると、見た目よりもひどく軽いのがわかる。
それから、眠っているからこそ見せる弱さ。
奥の俺の布団まで運び、そこに横たわらせ、葉桜の着物に手をかける。
俺の向かいに座った総司は、薬箱から真新しい包帯を取り出す。
「強情だからとはいえ、ちょっと乱暴な方法ですよね」
「こうでもしなきゃ、葉桜はちゃんと怪我の具合を教えねぇからな」
着物脱がせても、胸のあたりには強くサラシが巻かれてある。
腹の辺りに巻かれているサラシに血が滲んでないのを確認し、怪我の辺りに手をかける。
通常は胸だけに巻いているからまだ本調子ではないはずだが、それで眠っている葉桜の表情が変わらないのを確認し、俺は安堵の息を洩らした。
「良くはなってるみてぇだな」
「一応別な薬は飲んでいるみたいですからね」
腹部をきつく巻いてある包帯を外してゆくと、葉桜の綺麗とは言い難い肌が現れてくる。
普通の女ではないが、男でも葉桜以上の古傷を持っているものはいない。
腹のあたりの真新しい傷は山南さんとの仕合でついたものだが、葉桜の身体を背中が見えるように返せば、中央辺りに大きな切り傷が見える。
既に古くなっているとはいえ、葉桜のその傷は相当深く、相当痛々しい。
総司から包帯を受け取り、俺はそれを丁寧に葉桜の腹部へ巻きつけてゆく。
当たり前だが、深く寝入っている葉桜はまったく抵抗しない。
「総司、その別な薬ってのはなんだ?」
総司が葉桜によく懐いているのは知っているが、それにしても仲がいい。
山南さんがいなくなって以来、共にいる姿をよく見かける。
同じ隊の組長、副組長とはいえただの仲間とは思えなくなるぐらいだと聞いている。
「僕もよくは知らないですけど、なんでも小さい頃から定期的に飲んでいるとか言ってました。
処方しているのは葉桜さん自身だそうです」
「そんなことまでできるのか、葉桜は」
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