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「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
母さんがそう返してくれたのに対し……
――妹はまだ膨れていた。
いつもなら、いの一番に返してくれるのだが、……ちと、からかいすぎただろうか?
「私だって早くなってやるもん……」
妹はぶつぶつと、呪文のように言葉を吐き出している。
聞いてみるに、その呪い(?)の対象は俺ではなく、妹自身のようだ。
「……レディーは清楚に、ゆっくり食べた方がいいぞー。雑に食べても、はしたなく見られるだけだ。その点において、おまえは完璧と言える」
さっきと言ってることが真逆の俺だった。
扉を閉めるときに、僅かな隙間から入り込んだ景色。
「……いってらっしゃい」
そこには頬を赤らめ、微笑みながら手を振る妹がいた。
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