Move

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そして僕は……… いつの間にか右手で握っていたナイフで、自分の首を一息に刺した。 抜く。刺す。抜く。刺す。 何度も、何度も刺した。 ズタズタに。メチャクチャに。グシャグシャに。ギタギタに。 僕は僕でありたいから。 僕は僕でありたかったから……… 痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ。 熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ熱イ。 ……苦しくて、どうしようもなくて、途中でやめたくなったけれど――これが僕である証だから。 これがなければ僕じゃないから。――刺し続けた。 口の中は血の味が広がっていた。 刺ス、刺ス、刺ス、刺ス。 ここは狂った世界なんだ。僕はおかしくなんか、―ない。 壊れた人形のように、何度でも繰り返そう。 操り人形のように、定められた演技を披露しよう。 観客などいない。 僕は独りだ。 ――最期の時。 朦朧とする意識の中で。 ニヤニヤと、ニタニタと。 奴らが僕を見ていた。
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