発見

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ゆっくりとまぶたが開いた。 睫毛も黒。瞳も黒。 目は少し切れ長で、だけど怖い印象はなかった。 黒い瞳は澄んでいるとは言い難い、鈍い反射を繰り返す。 少し寝ぼけているようで、この世界に戻ってきたことを理解しようとしているようだ。 目が合う。 数秒。 彼の目が少し見開き、また数秒。 笑った。 微笑んだ。 目を細めて、口を歪める。 軽蔑、喜び、羨み、絶望、諦め、安堵。 いろんなものがごちゃごちゃに混ざり合って、醜くて、でも綺麗で。 涙が零れそうで、笑いだしそうで。 私は、その彼の表情に、私は人間と会ったのではないことを思い知った。 私はなんだか泣きわめきたくなった。
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