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「はじめまして」
彼は言った。
作り直した笑顔は、人間らしくて少しがっかりした。
私は会釈で返した。
人と会話することは苦手だ。
「あなたを、待ってたんだ。ずっと待ってた」
私、
私に用だったのか。
だけど、私と貴方ははじめましてのはずなのだ。
彼もさっきそう言った。
「なんでもするから、僕を置いてくれませんか、此処に」
彼は驚いていた。
私が二つ返事で了承したから。
どんな事情かは知らないけどおそらく、ダメもとで言ったんだろう。
当たり前だと思う。
初対面の人を泊めるのはいろんな意味で危険だろう。
しかも彼は知らないだろうが、この家には私と娘しかいない。
そうなのだ。
彼の様子で一泊ではないことはわかっていた。
…私は、人一倍マイナス思考の私は、彼が気に入ってしまった。
その雰囲気に。
例えば、新種の小動物に出会った生物学者のような気分だ。
なぜだろう、私は何も不安は無かった。
この、私に遺された大切な家に知らない少年を住ますことに。
私はこの非日常を喜んで受け入れた。
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