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私はともかく負のループから抜け出そうと、極力窓の外を見ないようにしていた。
せめて雨戸を閉めようと思ったけれど、その行為は、雨に触れてしまうのでどうしてもできない。
雨が止んでくれる気配はないかと窓の外を見る。
この家の門は、玄関からある程度の距離がある。
3階にある私の私室からはその綺麗な門がよく見えるのだ。
私はこの家のすべてを愛しているけれど、とりわけ門が好きだ。
石材で出来ているのだと思う。
白に近い淡い色なのに雨などで変色せず、ずっと純白を守っている。
私は、そんな物が好きなのだ。
醜い感情を羨望に塗りかえて。
それを、最初はゴミかと思った。
限りなく黒いそれは、白い門と共に在った。
何故、門にゴミが着いている?
あんなにも大きな。
もしや、隣の夫人の嫌がらせだろうか。
私の持っているものに対する嫉妬を隠そうとしない彼女。
彼女はお金がほしいらしい。
別に、私はお金が欲しかったわけじゃない。
お金は、人間を狂わせるイメージがあるから、私は好きでない。
お金なんて、いらない。
いらないのよ。
羨ましく思われるものなんて、何もない。私は、何も持っていない。
むしろこの命を貴女に捧げたくてたまらない。
私は、幸せなんかじゃない。
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