発見

6/12
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
不意に動いた。 ゴミだと思っていたそれが、動いたのだ。 風はなく、木々は張り詰めるように静かだ。 この閑静な住宅街の夜は、それの動きをより浮き上がらせた。 目の錯覚ではない。 ゴミだと思い込むには、私は視力が良すぎた。 わかってしまった。 動いて、角度が変わり、黒以外の色が見えたのだ。 驚いた 驚くということを思い出した。 とてもとても驚いた 時折覗く、黒以外の、 温度の色 肌の、色。 雨で黒と同化しているけれど、はっきり見えた。 人間以外に肌の色を持ち、動くものなんてあるだろうか。 ありえないだろう。 何かの、間違いでは。 あれは人間らしい。 いや、人間だった。 確信を持ち、今までぼんやりとしていたそれの輪郭が、急に鮮明になった。 なんだか背筋が寒かった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!