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私の心は少し落ち着いた。
良かった。
あれは、隣の住民が置いていったゴミ袋ではなかった。
嫌がらせではなかった。
悪意がこめられた行為ではなかったのだ。
けれど、何故人間が私の家の門付近に座り込んでいるのだろう。
私に用…だったら普通に訪ねてくれば良い。
…これも嫌がらせなの…?
石でも投げようとしているのだろうか。
あの黒は、細身で、若かったように思う。
隣に住む50歳近い夫人には子供が居なかったはず。
わざわざ人を雇ったのだろうか?
有り得るかもしれない。
今から大声で怒声を浴びせられたら泣かない自信がない。
あえて言わせてもらうと、自分の心が弱くて、思考が極端すぎることを私は十分に理解している。
今、自分の手が尋常ではないほど震えているのはある意味恐怖だ。
だからといって、直るわけではない。
私は昔からそうしているように、温かい飲み物を飲んで落ち着こうと思った。
実家にいた時は手伝いの方がよくお茶をいれてくれた。
それからずいぶん経った今でも、習慣になっている。
そうと決まれば、早速1階に降りて行くことにする。
私は、本当は温かいものは苦手だ。
昔から、ずっと。
それを、言い出せなかった。
けれどいつしか、温かい飲物は精神安定剤となった。今日はとびきり熱い紅茶をいれよう。
なぜなら、今日はとてもとても寒いから。
私は、あまりの寒さにコートを着ようかと思ったが、クローゼットから引っ張り出すのが面倒でやめた。
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