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それはそれは綺麗だった。
ビクビクしながら近づくと、それは若い男だとわかり、内心本当に気持ち悪かった。
ストーカーなんてテレビの中だけで充分だ。
けれど、もう少し近づくと、その若さに驚いた。
服は真っ黒で、細身のジーンズ姿。
髪も今時の若い男にはめずらしく真っ黒だ。
耳にかかる程度に切り揃えられていた。
眠っている。
寝息が規則正しいリズムをつくる。
だいぶ寒そうだ。
唇がかさついていた。
顔にははっきりと幼さが残り、確実に成人はしていない。
まつげが長く、影をつくる。
確かに男なのだろうけれど、肌が白くて綺麗だから性別を超えた空気のようなものがあった。
高校生ごろだろうか。
ご家族は心配していないだろうか。
見たところ、荷物はないようだ。
とりあえず、起こしてみることにした。
私は、はっきりいってこの少年に純粋な好奇心を抱いていた。
この小綺麗な顔の少年は、いったいどんな声で話すのだろうか。
どんなに素敵な名前なのだろうか。
年齢はいくつなのか。
どうして、ここにいるのか。
おそらく、その浮世離れした空気にあてられたのだ。
私はなんとなく、彼は学校などには行っていないだろうと思った。
頭がおかしい私は、彼は天使なのかもしれないとも密かに思った。
彼の背中には羽など存在しないのに。
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