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頭上に広がる、澄み渡った群青色の空。
その中で光る、小さな星々。
一見、俺が元居た世界の夜と、何ら変わりはなかった。
月が二つあることをのぞけば。
横に並び青白く光る、下弦の月と上弦の月。二つ合わせれば満月になりそうだ。
そしてその存在が、今俺が異世界にいることを証明する。
「なにぼーっとしてんの!!」
いてぇ!!
俺は背後から背中を叩かれ、大きく仰け反った。
痛みに顔をしかめながら後ろを振り返ると、二つの月を背景に小さな影が一つ。
「あんたが駄々こねるから夜になっちゃったじゃないの!!」
銀色の髪をポニーテールに結った少女が、俺の鼻先にでこぼこした茶色い漆塗りの杖を突き付ける。
ふざけんな!
そもそも俺はお前が提示した条件を呑んだとは言ってない!
駄々をこねるのは当然だ!
「うるさいわね!下僕が主人に口答えするんじゃないわよ!」
少女は地平線の先に見える、黒々とした巨大な建物の方を向いた。
シルエットで見える建物には、いくつかの塔があるのがわかる。
某アミューズメントパークのアレにそっくりだ。
「罰よ。貴方はあの城まで歩いて行きなさい」
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