空の王者、現る。

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 青きトカゲの長は威嚇した。  その特徴的な瞳の中に、僅かに感情が見て取れるような気がするのは、気のせいか、はたまた仲間を無惨に惨殺された事による悲しみなのかは分からない。  三人はドスランポスの次の行動に警戒しつつ、大剣を横に構えたグランを先頭に陣を取る。地の利はあちら側にある。次の攻撃を防ぐ為だ。  ドスランポスのふくらはぎに、太い筋が浮かび上がる。  地面を踏みしめる足には、より一層力が加わり、膝が素早く屈伸する。  標的を視野に収めた瞳は細く、鋭く、より研ぎ澄まされ、じっと三人を見据えたまま、嘴(くちばし)が拳一つ分空き中から唸るような低い、低い鳴き声が漏れる。  緊迫した空気が流れる中、ドスランポスの、カカトが僅かに地を離れた。それと同時にグランは構えた剣を盾に、渾身の力を込め大地に切っ先を深々と突き刺した。跳躍し飛び掛って来るは速度を増した大爪。  瞬間、空が朱(あけ)に染まり、あまりにも暴力的な熱が、襲い掛って来ようとする驚異を焼き払う。  三人があっけに取られる間もなく、火達磨となったドスランポスはまるで紙屑の如く吹き飛ばされ、岩肌に激しく体を打ち付け、雄叫びを上げる暇も与えられずに絶命したのだった。
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