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――しかし……さっきの女子。何度か見たことがある気がする。
肩に掛からない位の所で切られてたショートヘア。力無く開かれていた目――それに呼応するような声。
「あぁ……何度か見たことあるって、俺らと同じクラスじゃないか」
俺って酷い奴。と自虐的に言葉を口にする。
――えっと……確か名前は……
「…………北条つむぎだったっけ?」
――そう言えば北条つむぎって……
拙い記憶を辿り、一人の名前を雄二は呟いた。その事により、不明瞭だった記憶は徐々に思い出されていく。
堺雄二と北条つむぎの接点は余りにも少ない。それは、クラスが同じだと言うこと以外無いと言っても良いくらいに。
同じクラスであるにも関わらず、雄二の記憶に彼女が残らなかったのもそのためだ。
しかし、唯一深い関わりを持っている翔太から彼女に関する愚痴を聞かない筈もなくそれを聞かされた堺雄二の北条つむぎ像は相当に歪んだものとなっていた。
翔太にそんな事をする女子は誰なんだ?と言う好奇心から一時期は、クラス内を探したが、結局探し当てる事など出来なかった。
「彼女相当に影薄いんだよな……」
――授業中なんて名指しされないし……っていうか、まさか彼女が翔太の言ってた人物なんてなぁ。アイツから見た北条ってかなり歪んでるよな。
雄二は苦笑し、ため息をこぼした。
「……口煩くて、雀みたいな鬼トマトって」
――確かに口煩く、雀みたいに小柄だったが……トマトな所なんて何処にもなかったじゃないかよ。
翔太の彼女にたいするイメージを思い出し雄二は更に苦笑した。
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