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翌日、雄二は何時もよりも二時間近く早く家を出て学校へと登校すると、校門で一つ大きなため息を漏らした。
「はぁ……出来れば、あの人だけとはもう会いたく無いんだけど」
――きっとこういった予期せぬ事に興味があって、信じてくれる人と言えば、あの人しか居ないんだよな……
凄く嫌そうに眉宇を歪めると、雄二は校舎内部へと入ろうと下足場前の扉に手をかけた所でため息を吐いた。
「…………鍵が閉まってる」
――まぁ、普通はそうだよな。
生徒は疎か、日もまだ昇りかけているほどの朝早くに教室への通路が解放されている訳がなかった。
「はぁ……」
雄二はやるせない気持ちを胸のうちに押し込めため息を吐くと、背後からふと声をかけられた。
「ため息だなんて、君らしくもない。まぁ、僕も君とはそれほど関わりをもった訳ではないから、君を語る事なんて出来ないんだけどね……こんなに朝早くにどうしたんだい?雄二くん」
――……相変わらずの饒舌ぶりだ。
簡潔にまとめることなどしない彼の言葉に苦笑した。
「あの……」
「なんだい?」
一息入れたあと、雄二は口を開く。
「最近、翔太が学校に来ていないのですが……何故かわかりますか?」
「へぇ……そうなの。その口ぶりだと、僕が彼のその失踪に手を貸したように聞き取れるのだけど……どうかな?あぁ、それと、僕は翔太くんとの仲がそれほど良いわけではないし、彼との会話は君が見ているあの場が最初で最後だよ」
一呼吸。ここでこれほどまで長く続いた言葉を止める。
「もし、雄二くんの言うことが本当ならば……翔太くんは何処に消えたのだろうね?」
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