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義樹は本当に楽しそうに笑っていた。その表情には何かふくみがあり、何か知っているのかもしれないと、疑いたくなるほどだった。
雄二はその表情に「何か知っているのではないですか?」と聞き返そうと口を開くのだが、言葉が出る一本手前で口を閉じる。
雄二自身問い詰めたい気持ちで一杯なのだが、饒舌で多弁な彼のことだ、気が付けば話している内容が百八十度回転してしまう事が安易に想像ついた。
――それにこの人、饒舌であること以外はまったくわからないんだよな。
「そうですか……それでは。俺の用件はそれだけなんで」
雄二はそれだけ伝えると踵を返す。
「そうかい。雄二くん、次は何処に向かうのかな?この学園の神隠しにあった生徒……とかかな?」
ピタリと雄二の脚が止まる。
「…………」
「さて、ここからは僕の独り言だけど。そんな被害者家族の言葉を聞くよりも……まぁいいか。さぁって、最近忙しくて助手の一人も欲しいのだけどねー」
あからさまに語りかけるように義樹は言う。
――こいつ……
それは挑発的であり。雄二はその誘いを無視するように、学園を後にした。
「……あらら、そうかいそうかい。僕は君が協力してくれるようになるのをしばらく待つことにするよ。それじゃあ頑張ってね、雄二くん」
小さくなっていく雄二に義樹は少し残念そうに呟いた。
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