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小さな桜の花が、空で踊るようにくるくると舞う。
彼もこんな風に、散る瞬間さえ美しかった。
あまりにも綺麗で、止めることも出来ずただ見つめていた私。
私もいつか散るならば、あなたのように……。
本当は、あなたと一緒に、行きたかった。
誰より何より、愛していたから。
雨上がり、水溜まりにはたくさんの花びら。
水面に映る自分は、泣き出しそうな顔をしていた。
私も、行きたかったよ……。もう一度そう呟くと、風の声が聴こえた気がした。
……だめ。君は生きて。
それは優しい、懐かしい声。
わかってる。愛しているから、私を置いていったんでしょう?
生きていないと、あなたを思い出せない。あなたと過ごした季節を待てない。
生きてほしいと、それがあなたの望みなら。
きっと、ずっと私は……。
うつむいて覗きこんだ水溜まりに波紋が広がり、たたえる水がほんの少し増えた。
――春よ、桜よ。
私は確かにここに居て、今もこうして想っています。
これから季節が巡っても、きっと、また思い出す。
あたたかく、とても優しい、困ったような、ほほえみを。
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