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空気の隙間を埋める、淡い小さなピンク色。
優しく儚くふわふわで、僕の大好きな彼女のよう。
きっと春が来るたびに、彼女は僕を思い出す。
辛い思いはしていない?
死んだ僕が言えないけれど、命よりも大切な君。
ふと立ち止まった君を巻き込む、桜吹雪。
彼女の長い髪が、美しくなびく。
僕のせいで、あの日ばっさり切った髪。ああ、その髪、随分と伸びた。
……流れた時間の長さだけ。
大人っぽくなった。
綺麗に、なった。
きっとこれからも、君はどんどん輝いていく。
私も一緒に行きたかった、と彼女が呟いたのがわかった。
……だめ、君は生きて。
彼女には聞こえないのをわかっていて、それでも僕は答える。
僕のわがままでしかないけれど。
愛しているからこそ、君に生きてほしかった。きちんと、伝わっているかな?
うつむいた彼女の横顔を見た。なだらかな頬を、涙が伝う。
胸が、締め付けられる。
その涙を拭える体も、慰めの言葉を紡ぐ声も、僕にはもうない。
君を泣かせてばっかりだね。
そのふがいなさに、困ったように僕は笑った。
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