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「あの、」
警察来てますよ?
昼モードの俺は強く言えない。だって中丸雄一だから。
近付いて胸ぐらを掴んでいる手を握り、そう告げれば途端に顔をしかめ、細い路地を俺が来た反対方向へ逃げていく。
アホか。
「だ、いじょぶ…ですか?」
俯いて顔は見えないけど、全然大丈夫じゃないオーラを漂わせているのを見て、凄い怖かったんだなと。
「も、平気ですよ…!いなくなったし、」
話してる途中で、くいくいと制服をつままれその人が顔を上げた。
ゆっくり、口が開いて、一音ずつ言葉を紡いでいった。
『あ』
『り』
『が』
『と』
無音の感謝の言葉だった。
彼は、まっすぐ俺の目を見ている。凄く澄んだ目で。
その瞬間、悟った。
( 声、出せないのか…? )
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