act.2

7/10
374人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「あの、」 警察来てますよ? 昼モードの俺は強く言えない。だって中丸雄一だから。 近付いて胸ぐらを掴んでいる手を握り、そう告げれば途端に顔をしかめ、細い路地を俺が来た反対方向へ逃げていく。 アホか。 「だ、いじょぶ…ですか?」 俯いて顔は見えないけど、全然大丈夫じゃないオーラを漂わせているのを見て、凄い怖かったんだなと。 「も、平気ですよ…!いなくなったし、」 話してる途中で、くいくいと制服をつままれその人が顔を上げた。 ゆっくり、口が開いて、一音ずつ言葉を紡いでいった。 『あ』 『り』 『が』 『と』 無音の感謝の言葉だった。 彼は、まっすぐ俺の目を見ている。凄く澄んだ目で。 その瞬間、悟った。 ( 声、出せないのか…? )  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!