act.2

8/10
374人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「え、あ…うん。」 なんて返したらいいか分からなくて曖昧な返事をすると、伝わってないと勘違いしたのか、鞄からメモ帳を取り出して何か書き始めた。 『追っ払ってくれてありがとう』 お世辞にも綺麗と言えない字で書かれた言葉は、確かにさっき読み取った感謝だった。 ( やっぱり… ) 軽く頷いて、メモ帳に俺も少し書き込む。 『どういたしまして。 声は、聞こえる?』 そうすると、少し微笑んで縦に首を振った。 『ちゃんと聞こえてるよ。』 「そっ、か。 変なのに絡まれてたけど気をつけないと、ダメっすよ。ここら辺そんなのいっぱいいるんで。」 俺も、その一部だから。 とは、さすがに言えなかった。 『うん。』 緊張していた顔が緩んできて、最初よりも優しい表情になった気がする。 …なんだか、俺おかしいのかも。 無性にこの人を守ってあげたくなる。儚い笑顔を壊されちゃいけない。 なんていうか、自分の中に生暖かい風が吹いているような、優しさと胸くそ悪い居心地の悪さ。 初めて会ったのに…。 「竜也!」  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!