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「え、あ…うん。」
なんて返したらいいか分からなくて曖昧な返事をすると、伝わってないと勘違いしたのか、鞄からメモ帳を取り出して何か書き始めた。
『追っ払ってくれてありがとう』
お世辞にも綺麗と言えない字で書かれた言葉は、確かにさっき読み取った感謝だった。
( やっぱり… )
軽く頷いて、メモ帳に俺も少し書き込む。
『どういたしまして。
声は、聞こえる?』
そうすると、少し微笑んで縦に首を振った。
『ちゃんと聞こえてるよ。』
「そっ、か。
変なのに絡まれてたけど気をつけないと、ダメっすよ。ここら辺そんなのいっぱいいるんで。」
俺も、その一部だから。
とは、さすがに言えなかった。
『うん。』
緊張していた顔が緩んできて、最初よりも優しい表情になった気がする。
…なんだか、俺おかしいのかも。
無性にこの人を守ってあげたくなる。儚い笑顔を壊されちゃいけない。
なんていうか、自分の中に生暖かい風が吹いているような、優しさと胸くそ悪い居心地の悪さ。
初めて会ったのに…。
「竜也!」
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