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音のしたほうを見れば、細身の男が近づいてくる。
茶髪さんは、驚いたように目を見開いて微かに口を動かした。
「勝手に動き回るなってあれだけ言うたやん!
揉め事があるっつーとこに来たらこれやもん」
近くで見れば、漆黒の髪色に瞳。身震いがした。
…こいつ、同じ世界の人間だ。
背中から出す威圧感がハンパじゃない。さっきのチンピラ紛いの奴らとは比べものにならないくらいに。
目の奥に見える冷えきった目に、思わず体が勝手に戦闘体制をとる。
「連れが世話になりました。すんませんでした。」
『この人に助けてもらった』
おおかたこんな意味のことをメモ帳に書いて見せたんだろう。
黒髪がぺこりと頭を下げた。
「ほら、竜也行くで。」
竜也という茶髪の人は、目を大きく開いて戸惑ってるなか、黒髪に腕を引かれて人混みの中に消えていった。
なんの根拠もない。
まだ何も知らない。
だけど本能的に、あの人たちとは、必ずどこかで『敵』として、また出会うような気がした。
ちらりと、今は奥底で眠る黒獅子が顔を出す。
( やってやろうじゃねぇか… )
どこぞのチームの頭だろう。
軍団率いて俺たちを潰しにくればいい。そのまま殺してやるよ…。
口角が厭らしく上がったのに自分で気づいて、頭によぎった邪な考えを消し去って、大きく深呼吸をした。
( なに考えてんだよ、おれ )
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