act.2

9/10
374人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
音のしたほうを見れば、細身の男が近づいてくる。 茶髪さんは、驚いたように目を見開いて微かに口を動かした。 「勝手に動き回るなってあれだけ言うたやん! 揉め事があるっつーとこに来たらこれやもん」 近くで見れば、漆黒の髪色に瞳。身震いがした。 …こいつ、同じ世界の人間だ。 背中から出す威圧感がハンパじゃない。さっきのチンピラ紛いの奴らとは比べものにならないくらいに。 目の奥に見える冷えきった目に、思わず体が勝手に戦闘体制をとる。 「連れが世話になりました。すんませんでした。」 『この人に助けてもらった』 おおかたこんな意味のことをメモ帳に書いて見せたんだろう。 黒髪がぺこりと頭を下げた。 「ほら、竜也行くで。」 竜也という茶髪の人は、目を大きく開いて戸惑ってるなか、黒髪に腕を引かれて人混みの中に消えていった。 なんの根拠もない。 まだ何も知らない。 だけど本能的に、あの人たちとは、必ずどこかで『敵』として、また出会うような気がした。 ちらりと、今は奥底で眠る黒獅子が顔を出す。 ( やってやろうじゃねぇか… ) どこぞのチームの頭だろう。 軍団率いて俺たちを潰しにくればいい。そのまま殺してやるよ…。 口角が厭らしく上がったのに自分で気づいて、頭によぎった邪な考えを消し去って、大きく深呼吸をした。 ( なに考えてんだよ、おれ )  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!