act.3

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「中丸くん遅いよー」 いつものファミレスに入れば、奥のほうの喫煙席にデカい影が一つ。 悪い悪いと声をかけて正面に座ると、パフェの下部分だろうプリンに手をつけはじめた。 こいつは、見た目に似合ってるんのか似合ってないのか、極度の甘党だ。 「最近騒がしいけど、誰が馬鹿やってんの?」 騒がしいのは成南男子高校、馬鹿は頭決めに反発してるやつら。 目の前にいるやつは、成南男子高校二年、田口淳之介。次期頭と言われてるやつの右腕である。 「最初の予定だったら聖で決まるはずだったんだけどさ、反一成派…というよりは反田中兄弟派が集まって騒いでんの。 まぁもうそろそろケリつくから。」 「つくじゃなくて、そいつらにつけさせるんだろ?お前が裏から糸引いて。」 「やだなぁ人聞き悪い。それだと俺、悪代官みたい。」 笑うと糸になる目は、よく見ると誰よりも笑ってない。絶対零度を保った酷く冷たい目。さっきの奴と同じかそれ以上。何が嫌かって、それに加えて死にきった目だ。最高にたち悪い。 「聖は知らないんだろ。お前が裏でこそこそ動いてんの。 反田中派を片っ端から潰して辞めさせてるとか。」 「知るわけないじゃん。俺のこと、喧嘩なんかできないナヨ男だと思ってんだから」 1トーンくらい下げた声は本気なとき。赤西よりも分かりにくいこいつがもつ、唯一感情が動いたサイン。 「聖が知ったらキレるぞ。」 「いいよ別に。聖を担いで頭にするのが俺が成南に来た目的だし。それでキレられて潰されても、そのとき聖が頭なら、俺は逆に本望だよ。」 ( …恋は盲目か ) 高校の推薦とか全部捨ててでも好きな奴を担ぎたいのか。田口なら成南制覇だって出来るはずなのに。それを避けて、全力で補佐に回る。 ごめん、俺には、分からない。  
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