act.3

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とりあえず、珍しく田口が伝票の上に野口英世を置いて帰ったことにびっくりした。 ( あのやろ… ) たまに、苛つくくらいカッコいいことをやってくれるのが田口だ。 青の学ランがあいつの長身に見合ってて、威圧的な雰囲気がもっと強いものになっていた。 田口のマジな喧嘩は、一度しか見たことがない。 中学んとき俺が立会人になった、赤西とのタイマンのときだけだ。 最終的には、田口の回し蹴りが赤西の顔に入って、そのまま赤西が気を失って勝負がついた。 田口の回し蹴りは、足が長いぶんリーチも長い。蹴りのスピードには欠けるが威力というか衝撃は物凄い。 俺も実際くらったからよく分かる。 今、また二人がタイマンはったら結果はどうなるんだろう。 二人とも背負っているものが大きくなったから、そう簡単にはできないけど。 ( 俺だけ宙ぶらりん、か ) いい加減落ち着ける場所を探さないと、な。 ふらふらして、家にも学校にも紅蓮にも居場所がないとか。 溜め息をつくと幸せが逃げるというけど、だったら、もうそろそろ俺の幸せのタンクは空になるんじゃないのか。 逆に、空っぽになってたほうが気が楽なのかな? 余計な期待も恐れも、抱かなくて済むし。  
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