act.1

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──喧嘩に明け暮れていた。 よく言われる。見た目に似合わないと。 親の敷いたレールの上を、ただ無我夢中で走る自分に対して急に嫌気がさした。 そういう生活をしてるやつは世の中にたくさんいて、きっとレールの上でどうやって楽しくやっていくかを見つけているんだと思う。 でも俺には息苦しくて、だけど反抗なんか出来なくて、 逃げ出すように、夜な夜な家を抜け出した。 夜はいい。羽根を伸ばして自由に飛べる。 誰も俺をシラナイ。俺も誰のこともシラナイ。 売られた喧嘩は買う主義。 売ったやつには二度と声なんてかけられないくらいにまで殴る、蹴る。 そうなる覚悟で喧嘩を吹っ掛けてきたんだから仕方ない。ハイリスクハイリターン。 「中丸、お前この街で随分有名になったよな」 「お前ほどじゃねえよ、赤獅子」 「そのアダ名自覚あったんだ、黒獅子さん」 茶化すように言ったこいつは、俺をこっちへ来るように誘った張本人。 基本二人でこの街を荒らしているため、赤獅子黒獅子だなんで物騒な異名がついてしまった。  
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