973人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら?藤本君なら気づくと思ったわ。彼女の事が心配で、気付かなかったのかしら!」
女はくすくすと笑った。
「あんたにそんな事言われる筋合いねーな・・・・」
俺はますます不機嫌になる。
「ごめんなさい。気に障ったなら謝るわ・・・・」
薄く微笑むその顔に俺はドキリとした。
俺の気持ちはどうであれ、すげー綺麗だった。
この女は俺より1コ年上らしい・・・が・・・その容姿といい、頭のレベルの高さといい、落ち着いた性格といい、大人の女って感じがする。
少なくとも、俺のまわりのアホ女どもにくらべたら、やっぱすげー大人だよな・・・
「なあに?」
女はとてもしなやかに笑った。
「いや、なんでも・・・」
女の妖艶な微笑みは、俺を動揺させる。
「ねぇ・・・藤本君・・・もし今日これから時間があるなら、一緒に行かない?」
女は階段下に見える祭り会場を指さして、微笑んだ。
「悪ぃが、俺は祭りに興味ねーんだ。他あたってくれよ・・・」
なんとなく女と2人で行くのは気がひけた。
ケンカしてるとはいえ、俺にはやっぱ 莉海がいるし・・・・
「そう・・・残念だわ・・・私、ここのお祭りってはじめてで・・・ちょっと楽しみだったの。」
そうだった・・・この女は校長の遠い知り合いの娘だかなんだかで、その頭の高さをかわれて、他の高校から、わざわざ抜擢してつれてきたって満崎が言ってたな・・・
「ねぇ・・・それじゃーここの案内係りとしてならどう?」
「案内係り?」
「そう・・お祭りの案内係りよ」
少し照れたように笑う女の顔は、いつもより幼く見える。
普段は生徒会長として大人ぶっていても、こいつも普通の女なんだ・・・
なんとなく、俺はそんな女に親近感を覚えた。
「案内係りねぇ・・・あんたは生徒会長だし・・・断れねーな。」
「ありがとう。」
綺麗な顔でくすくすと笑う。
けど、なんで俺なんだ?
今日の祭りの警備の担当には満崎や他の人もあたっているはずだ・・・
わざわざなんで俺のとこなんかに来るんだ?
俺には訳がわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!