桜の海で

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町の東側が入江を介して海に面しており、残りの三方を高い山々が囲う、海桜町 観光の町として有名なこの町は、夏は避暑地として多くの旅行客が訪れ、秋は紅葉、冬は雪景色を楽しみに人々が訪れる そんな、海桜町に最も観光客が集まる季節が春だ 町の名前にも有るように、この町には海ともう一つ誇れるものがある それが、三方の山々に植えられた数百万とも言われる数の桜 春になると一斉に花開き、一面を白に近い薄桃色に染め上げてしまう それは、葉の緑や山の肌すらも微塵も無く覆い隠してしまうほどだ そして、この町ではその桜に関する少し幻想的な現象が起きる 山々の桜が満開に咲き誇る頃、この町では地形的理由から西からの強風が吹く その強風に乗って数百万の満開の桜の花弁が大空へと舞い上がる それは青い空一面を覆い隠し、太陽すらも霞むほどの薄桃色の幻想的な空が頭上に広がるのだ
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