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僕の態度が信じられない、という顔をするかと思ったが、アインはわりと素直に適当に近くの席に腰かけた。
「アイン・ガブリエル君だね。僕は監督生のジョー・スコットだ。ヒュー、悪いが席を外してくれないか」
「はい」
ヒューは少し悲しそうにアインを一瞥した後、静かにドアを閉めて出て行った。
「監督生が来るなんて、何事なんですか」
アインは強気だ。そもそも、うちの寮では上級生に対し素直すぎる生徒が多すぎるのかもしれない。たまにはこういう厄介な下級生の世話を見るのもいいだろう。
「人のことを先生か警察かみたいな目で見るのはやめてくれよ」
僕は笑顔で話し始めた。
「大変話し辛いことなんだが、実は今日相談を受けてね。……アレキサンダーとルイからだが。」
名前を伏せても、もし自分が言われなかったら余計気になると思ったので、なるべく正直に言うことにした。
「まさか俺の性格を更正させて下さいとか、そういうめんどくさい感じの……」
「いや」
いちいち突っ掛かるのを聞いていられないと思い、僕はアインの言葉を遮った。
「新学期が始まって三ヶ月ちょっとか……。この時期には本当に良くあることなんだが、二人がどうも君とウマが合わないようでね、単純に部屋割りの相談だった」
僕が言うと、アインは一瞬驚いたようだったが、すぐに乗り気になった。
「何だ、もっとめんどくさいやつらだと思ったら。そんなことが出来るなら俺もお願いするんでした。もっと人数が少ない部屋はないんですか」
僕は思わず苦笑した。
「落ち着きなさい。まず、ウマが合わないのは仕方ないが、話してみた感じ、君の口調に少々乱暴なところがあるようだ。それからはっきり言うが、無断外出のことも聞いている」
簡単に話を進めて欲しいと思っていたのか、アインは少し表情を暗くした。それは怯える顔ではなかった。
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