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「実は、同じ部屋のやつのことなんですが」
ストレートの髪……アレキサンダー・ホワイトと、巻き毛のルイ・パームは四人部屋の同室らしいのだが、その部屋の一人がどうしても我慢ならないらしく、部屋を替えてほしいということだった。
「あぁ、君達みたいな相談はたまにあるよ。どちらかというと僕の管轄だから気にしないで。我慢ならないか……どんな風か詳しく聞かせてもらえるかな」
「はい。基本的に心を閉ざしてるというか……笑っているところを見たことがなくて、口を開いたかと思うと『黙れ』とか『静かにしろ』とか、あとは……」
アレキサンダー……アレックスは言い辛そうに口を濁した。
「毎晩ジョーが見回りをした後に抜け出して、僕達も良く分からないところに行ってるみたいで」
おや、と思った。成程、それが監督生である僕に相談するか迷った理由なのかもしれない。
「告げ口するようで嫌なんですけど、何をやってるのか分からないやつと、これからずっと同室と思うと気が重くて」
今度はルイが口を開いた。どうも正直者らしい。
「分かった。ありがとう、正直に話してくれて。先生と相談してみるよ」
僕は二人の部屋番号を聞き、朝食に向かわせて、メモ帳に今のことをまとめた。
『七年生(14歳)アレキサンダー・ホワイト、ルイ・パームより。506号室。アイン・ガブリエルの部屋を替えて欲しい。理由は彼の閉鎖的性格、言葉遣い、夜見回り後の無断外出』
寮を出て学校の講堂に着くと、寮長のタッド・ジョンソンと副寮長のローン・グリーンが二人揃って僕の顔を見た。
ちなみにこの二人は同室だ。
「珍しいな、監督生。朝礼2分前だ」
タッドが軽く僕の肩を引き寄せて明るくこう言った。
僕と身長は同じくらい高い方だ。やや長めの金髪と整った顔が間近に来る。この屈託の無さも長い学生生活で流石に慣れてきた。
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