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「いや、下級生が部屋を替えてほしいって相談をしに来てね」
「はぁ?朝から?全く小ちゃい子はこれだから……ご苦労さまぁ」
「最初はお前に相談しようとしたらしいけど」
「えぇっ!?なんで俺?めんどくせっ」
タッドの身も蓋も無い言葉に、僕は笑って会話を終わらせた。
おおざっぱで周囲の人間みんなから好かれて、常に周りに誰かが居る……確かにそういう人間には近寄りがたいものがあるかもしれない。タッドは繊細な配慮なんかも苦手だしな。相談して来るのが同じような明るい体育会系ならいいんだろうが。『お前そんなんじゃだめだよ。自分が相手を笑わせるくらいじゃないと!一ヶ月頑張ってみろ!そしたらまた話聞くから』……こんな感じだろうか。というかどうせ僕に投げられるんだろうが。
副寮長のローンは、少し中性的というか、タッドとは対象的にがつがつしないタイプだ。ひとつに結べそうな暗い茶髪をだらしなく伸ばしていて、でもそれが何となく『格好良い』という言葉に嵌まってしまう羨ましい男だ。たまに黒縁眼鏡なんかかけるのがまたサマになって悔しい。僕がかけてもどっちかというとキャラ通りになりそうな気がするし。
ローンは低血圧で、一日中眠そうな顔をしている。
朝礼が始まった。生徒会長のジョン・バイカスが手短に挨拶をし、前に並ぶ聖歌隊と共に聖歌を歌う。
その後教室に移動。クラスはAからFまであり僕はAクラス。単純に成績の良さで決まる。まぁ、僕は何とかこのクラスの真ん中をキープしているくらいだが。ちなみにタッドはギリギリこのクラスに入れるくらい。ローンは波があって行ったり来たり。たまに学年3位とか取ることもある。いつも本気を出せばいいのにと思う。
僕は教室の前で、寮の監視にも携わっているフォーカス先生を捕まえ、ざっくりと下級生の話を伝えた。
「そうか、授業が終わったらまた話を聞くことにしよう」
一限目は歴史。他のクラスと違い明らかにアップテンポで進めているのであろう先生の説明を聞きそびれないよう、皆必死でノートに書く。ローンなんかは飽きたのか時々窓の外の蝶々とか鳥を見ていたようだが。タッドによるとどうもローンは自分のペースでやらないと身に付かないらしく、前の日にきちんと全部予習をするらしい。真面目なんだか不真面目なんだか。
授業が終わり、フォーカス先生に呼ばれ僕は席を立った。
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