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「アイン・ガブリエルか」
先生は少し悩む様子を見せた。
「特に目立った様子はないんだがな。確かに友達と話しているところは見たことがない。そういう理由なら仕方ないな、アインは部屋を移そう。
しばらくは506号室は三人部屋にして、アインの適当な移動場所はまた後で決めよう。先に一度無断外出の件も含めて、私が行く前に君が訪ねなさい。その方がいいだろう」
フォーカス先生は若い柔らかい雰囲気の先生だ。どことなく僕に似たところがある。物事をなるべく穏やかに進め、上が出て行くより生徒の自主性を大事にした方がいいと思っているようである。
「分かりました。同じ学年で四人部屋を三人で使っているところが二部屋あるのでなるべくそこに移したいのですが、話してみて性格に問題があるようなら、また別の対処法になるかもしれません。
場合に寄ってですが、上級生の部屋に入れるのは問題ないんでしょうか」
「あぁ……うぅーん、そうだな。私も君と同意見だ、明らかにアインに問題があるようなら上級生に指導してもらうという形をとるのは構わない。親御さんに連絡は行くだろうがな」
表情を歪めるフォーカス先生はかなり人柄が良いと思う。何にせよ、先生に心配をかけさせるアイン・ガブリエルに何らかの問題があることは明らかだ……。
僕は全ての授業が終わると、早めに寮に戻り、506号室のドアをノックした。
「ハイ」
出て来たのは、アレックスやルイよりは少し背の高い、ローンのような暗めの茶髪のゆるい巻き髪の男の子だった。
「突然すまないね。監督生のジョー・スコットだけど、君はアイン・ガブリエルかな?」
わりと普通そうな少年にほっとして話し掛けると、少年は首を横に振った。
「僕は同室のヒュー・バートンです。よろしく」
「よろしく」
握手をした手は細く、僕はヒューにどことなく繊細な印象を受けた。
「アレックスとルイが言ってることですよね。まだ3人とも部屋に帰って来てませんが、良かったら中へ」
「ありがとう」
ヒューは随分落ち着いた性格のようだ。やはり少しローンとイメージが被る。
「朝はどうもすみません。僕はあの二人ほど行動的じゃなくて。」
ヒューはお茶を煎れながら話した。自分だけ朝僕の部屋に来なかったことを詫びているようだった。
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