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「いや、気にしてないよ。でも率直に、君はアインのことをどう思ってるのか聞いてもいいかな」
「……」
ヒューは少し面食らったように、一瞬黙った。人間関係の絡みに深く関わることを苦手としているのかもしれない、何となくそう感じた。
「性格に問題があるから一人だけ部屋を出て行けなんて、やはりはっきり判断出来る材料が揃わないと、第三者が口出すのは難しいことなんだよ。だから同室の君の意見も聞いておきたいんだ」
補足的に説明すると、ヒューは仕方ないと思ったのか柔らかい表情で話し始めた。
「アレックスやルイと大体一緒だとは思いますが……まずアインは何を考えてるのか分からないところがあって、たまにそれが僕ら3人をすごく嫌ってるんじゃないかってくらい突き放した物の言い方になることがあります。
正直なことを言うと、もし僕とアインの二人部屋であればまだ少しは耐えられたかもしれませんが、四人っていう共同生活の中でアインが明らかに浮いていて、その空気が耐えられないというのはあります」
選ぶ言葉は柔らかいが、その適確と思われる表現が最初の二人より余程リアルで、僕は何だか淋しい気分になった。
「そうか。良く分かったよ。ありがとう」
「いえ。砂糖はいくつですか」
「砂糖はいいよ、どうも」
ヒューが煎れてくれた紅茶を飲みながら僕は考えた。
今の話を聞く限りでは、アインをまた他の四人部屋に入れるのは難しそうだ。
なら上級生か。監視という意味では最上級生、十年生の部屋に入れるのも仕方ないかもしれない。本人は嫌かもしれないが……なるべくその辺の希望も聞いて、穏便に話し合ってみよう。
「誰だよ?」
突然部屋の入口からぶっきらぼうな声がして慌てて振り向いた。
「アイン、失礼すぎるよ」
ヒューがたしなめたその相手がアインだと分かり、僕は少し笑顔を作った。
ヒューより背が低いと思われる黒髪の少年は、完全に敵を見る目で僕の顔を斜め上から見下ろしていた。
「そこ俺の椅子なんすけど」
アインが不愉快そうに僕に伝えた内容が謝ることかどうか一瞬悩んでしまい、結局ここに居座ることにした。
「気分を悪くさせたならすまなかった。しかしこれから話す内容でそんなことは関係なくなることだし、座らせてもらうよ。君も適当なとこに掛けなさい」
「……」
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