捨てる…置き去り。

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幸子は、そっと少女の肩を抱いて「お腹空いているでしょ?オバサンもペコペコなのよ…一緒に、ラーメン食べましょ!」幸子の腕時計は、8時になろうとしていた「うん!。」夏美は、即答した。それほどに、空腹だった。 幸子は、「今日は暑いから、お袖捲くりましょうね。」と、元は白い色であったと思われるブラウスに手をかけたら「ダメ!」夏美は、腕を後ろに隠して頬を引き攣りながら叫んだ。 幸子は、そんな反応をする子供達に慣れていた。「大丈夫なのよぉ、ちゃんと手当てをしなくちゃねぇ、オバサンは夏美ちゃんのの味方なのよぉ。」と、優しく微笑み小さな声で言いながら、そっと夏美を抱きしめた。 可愛いお人形がおまけに付いて来た、子供用ラーメンを食べ終えた満足げな夏美を、車に乗せて夫である誠司が営む小児科へ連れて行った。 不安そうな夏美をベテラン看護士の晴代は、そのふくよかな身体全体で包み込むように優しく抱きかかえた。幸子は、後はお願いね!と目配せしてまた車に乗り込み、待ち合わせている児童相談所・所長の梶田の元へ急いだ。
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