捨てる…置き去り。

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あらかじめ聞いておいた夏美の家は、チャイムを押しても、ドアを叩いても反応がない。玄関のドアは鍵がかけてなく開いていた。中は、真っ暗!人の気配はまるでない。黙って入る訳もいかず、近くの交番の警官を呼び中へ入った。電気は、止められているらしくつかない。おまけに、散らかし放題で生ゴミや使用済のオムツなどか散乱していて、臭いも凄い! とりあえず三人は懐中電灯で、いるかも知れない赤ん坊を探した。 2階に上がった若い警官が悲鳴を上げた!二人に緊張が走った。急いでかけ上がって見た物は、散らかった小さな屋根裏のような部屋の玩具箱の中へぬいぐるみや小さな玩具と同じで投げ入れてある、赤ん坊が壊れた人形のように転がっていた。 幸子は、恐る恐るそっと触れてみた。まだ微かに温かい気がした。生きてる?抱き上げた!「この子生きています!」 慌てて車に乗り込み、夏美のいる小児科医院へに急いだ。車のなかで、持ち合わせていた水を少し含ませてみたが飲み込む力はもはや無かった。 連絡済みの医師である夫誠司と看護士の晴代は、医院前で待ち受けていて直ぐさま治療にあたった。 夏美は、幸子夫婦の愛犬ゴールデンリトリバーに見守れながら、自宅リビングのベッドにも代わる広く淡いレモン色のソファーの上で、晴代にピンク色の可愛いパジャマに着せ替えられ、可愛い子供用夏毛布をお腹にかけてもらい、枕元には、読んで貰ったのであろう昔話の絵本とラーメンのおまけに付いてきた小さな人形が置いてある傍で、すやすやと寝息をたてていた。時計は、10時を、遥かに廻っていた。
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