捨てる…置き去り。

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夏美は、急いで用を足すとホッとして身支度を整えて外へ出た。 その時、白い車の中で大人の男女が、何やら仕切りと頭を動かし合って居る不思議な動作をしているのが、目に入った。 幼いながらにも、見てはいけないものだと咄嗟に判断して、便所のドアを音が立たないようにそっと閉め、見ないようにして走り去ろうとした瞬間、ふと不安が過ぎり便所の影に隠れながら振り返り車の中の女を見た。「あっ!お母ちゃんのだ。あの服!お母ちゃんのと同じだ!」夏美は、音を立たないように注意しながら一目散に三人の歩く方へ駆け出した。走る間に、涙が溢れ出すのを幼い一年生には、止める事ができなかった。 泣きなががら、駆けて来た夏美に三人は驚き代わる代わる「どうした?」と聞いてくる。「お化けが出たの!?」弱虫まあくんが聞いた。「まだお日様がたかいんやど!お化けなんかでるか!アホォ!」いさむくんが言った。「ホンなら、へびが出たんやないの!?」と、ふうちゃんが言った。夏美は、思わず「うん!」と、小さく泣きながら頷いた。 三人は、疲れた足取りで神社から長く続くたんぼ道を黙ったまま歩き続け集落の入り口に近づいた。 帰りの遅いのを心配した、まあくんの母親がイライラした顔で立っているのが見えた。
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