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泣き腫らした夏美の顔を、心配そうに覗き込むまあくんの母親をよそに「またあしたねぇ」と、急いで家に向かって走り出した。
夏美の家は、集落を抜け国道へ出て、小さな夏美には長く大きく感じる橋を渡り終えたら左へ折れて、更に外れの一軒だけぽつんと建っている、田舎に似つかわしくない赤い屋根の小さいが洒落た洋館である。
急いだ!一生懸命走った。ダンプカーが沢山走る恐い国道も橋も、ひたすら走った。 家の数メートル前で、ふと足を止めた。赤い屋根だけが見える。
俯いて、考える。「そうや!お母ちゃんやない!だって、さぁちゃんが居なかったもん。」あの車の中には、大人の男女がいただけだったのを思い出した。
夏美には、六歳離れた良く笑う赤ん坊の妹がいた。
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