捨てる…置き去り。

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とにかく、家への道をまた駆け出した。夏美の横を、白い車が通り過ぎ、さっき見た同じ服を着た母親が家の前で降り立つのを見ると、また立ち止まった。 その車は、家の駐車場へ入って行った。 母親は、夏美を手招きで呼び寄せた。近寄ると、いつもとは全然違った猫撫で声で「夏美ちゃんお帰り。」と、言いながらランドセルを剥ぎ取り、500円硬貨を握らせると「お母さん、大事な話し合いをしなくちゃいけないから、暗くなるなるまで遊んで来なさい!」最後は、命令口調だった。 車の中の男は、夏美に見られたくないのか、一度も振り返る事はなかった。 こんな事は、二ヶ月前くらいから度々あったので、環境にすぐ馴染む性格の夏美はすぐ慣れっこになってしまっていた。 が…妹の「せいちゃんは」?と、聞く隙も与えず母親はさっさと行けと背中を押した。 いつもなら、せいちゃんをベビーカーに乗せて、紙オムツと哺乳瓶を渡され一緒に外へ出されるのだった。
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