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「シッダールタよ。何処へ行っておった」
豪華な玉座に深々と座り、威厳を持って王が尋ねる。
「街へ行っていました」
シッダールタは立ったまま返事をした。
キジは隣で片膝をついてかしこまり、タージは入口で伏せている。
「王宮からの外出は禁止してあったはず! 隣国が攻めてくるやも知れぬ時に何を考えておる!」
王の息遣いが荒い。
「王宮に居ても、人は死ぬ時には死にますよ」
シッダールタは真っ直ぐ王の目を見て真面目に答えた。
「屁理屈など聞いてはおらん! もうよい! さがれ! 三日の間、自室から出る事はならん!」
王は荒い息遣いを隠そうともせずに言い放った。
シッダールタは諦めたように自室へと向かうと、ベッドに寝転がり壁に開けられた正方形の窓から空を眺める。
しばらくすると、キジが食事を運んできた。
シッダールタは青い空を眺めたまま動こうともしない。
「三日の辛抱でございます」
キジが食事を置いて部屋を出ようとすると、シッダールタが空を眺めたまま口を開いた。
「キジよ。お前は私の教育係だな?」
「そうでございます」
キジはシッダールタの言わんとする事を計りかねて、怪訝な表情をしている。
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