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キジは窓の外を指差した。
「あそこに大きな木が見えますね?」
「どこだ?」
シッダールタは窓の近くまで行って外を見る。
「あそこです」
指先を辿って行くと、遥か彼方に霞んだ木のような物が見える。
どれくらいの距離だろう。
国を2つくらい跨いでいるかもしれない。
もしあれが本当に木だとするなら、その大きさは計り知れない。
「あれは世界樹と呼ばれる木だそうです。木の頂上に一つだけ実がなっているそうですが、それを手に入れた者は永遠の生命を手にすることができると言われています」
「その程度の事ならば誰か手に入れた者がいるだろう」
「ここからではわかりませんが木は島にあり、島には異形の者が住み着いているようです」
「異形の者!?」
「はい。人で在りながら人に非ず、妖術で人を惑わし喰らうとの事です。生きて帰って来た者はおりません」
「それはどんな姿かたちをしているのだ」
さっきまで死んだ魚のような目をしていたシッダールタの目が、今はランランと輝いている。
「私も見た事はございませんのでわかりかねます」
答えながらキジは話した事を後悔していた。
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