二章・父と夕日

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「お父さん、起きてよ」  娘の声と体を揺さぶられる感覚で、僕はゆっくりと目を開けた。  時計を見ると午前7時50分。  少し寝過ぎてしまった。  軽くため息をついて頭を掻く。  そんな僕を心配そうに見降ろす少女。  今年で8歳になる僕の愛娘、夕日(ゆうひ)だ。 「起こしてくれたんだな、夕日。ありがとう」 「寝ぼすけさんのお父さんが夕日は心配でしょうがないよ」 「ハハハ、大丈夫。起きたらお父さんは夜までは寝ないから」 「それ、普通だからね……。それより、朝ご飯、作っといたから食べといて」  夕日は目玉焼きとトーストが置かれたテーブルを指差して軽く呆れながら言った。 「私、今日日直だからもう行くけど、お父さんもちゃんと仕事してね」 「ああ。行ってらっしゃい」  行ってきまーすと元気よく返事をして夕日はこの中途半端な広さの家を出て行った。  1つの階に2部屋ずつしか部屋がない2階建ての家。  1階は4畳半の寝室兼リビングと台所、あとトイレと風呂。  2階は実はこの家で1番広いけどタンスとか机とかでだいぶ狭くなっている夕日の部屋と、いろいろな道具と資料で埋め尽くされたとても狭い僕の仕事部屋だ。  僕は夕日が作ってくれた朝ご飯を食べ、流し台の中の食器を洗い、適当に掃除機を部屋全体にかけてから自分の仕事をすることにした。
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