二章・父と夕日

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 僕の仕事はイラストレーター。  主にゲームのモンスターとか小説の挿絵とかを描いている。  と言っても、そんなに有名ではない。  ちょっとグロテスクな絵が1部の人々に気に入られたおかげで仕事は少なくないが、かなり細々と活動を行っているため稼ぎはそんなに良くない。  でも、娘と2人で田舎の村に住んでいる分にはまったく問題ない。  たまの贅沢で夕日に何かしてやれるぐらいは稼げているし。  この村、雨犬(あまいぬ)村は四方を山に囲まれたとても小さな村だ。  人口はおよそ1000人ほどで、その3分の1近くがお年寄り。  いわゆる、過疎化の進んだ田舎というやつだ。  コンビニもスーパーもなく、生活用品は村に1つだけの雑貨屋で、食料は微妙な品揃えの個人経営のスーパーで買うしかない。  何かどうしても欲しいものがある場合は村を出て自動車で1時間ほどの市の中心部に行かなければならない。  バスも1時間に1本とかなり少なく、普通と同じなのはせいぜい病院と交番、それと集会所があるぐらいか。  とにかく不便極まりないが、雑貨屋の主人は顔が広く頼めばだいたいの物は用意してくれるし、村人は皆優しいため、意外と悪いところではない。
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