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皆さんは、この世にランプの魔人が存在しているのをご存知であろうか。ご存知ない? それが普通だ。
もしここで「ご存知である」などと言われても、その口調とメルヘン思考に超辟易すること請け合いである。
しかし、そうは言っても、メルヘンな心を大事にするのは大変素晴らしいことだ。ランプの魔人や天使、人魚などを信じて生きることは、今日のふて腐れた日本人にとってすこぶる大切であると言えよう。
――そう考える者達が、とあるカフェで話し合いをしていた。総勢五名。二人と三人で向き合っている。
二人組の方は夫婦であり、なにやら、三人組に相談を持ちかけているようだった。
「……聞いた話だと、貴方達は面白い仕事をしているようですね」
夫婦のうち、夫が切り出した。この男、名を亀井亀夫。顎鬚をいじりつつ、返答を待つ。
「ええ、私達は面白い仕事をしています」
ほくそ笑みながら、三人組の真ん中に座る男が答えた。黒のスーツに麦わら帽子という、滑稽な格好をしている。深々と被られた麦わら帽子のせいで、顔の造詣はよく見られなかった。
それは隣に座る二人も同じで、三人は全て同一のスーツを纏っているものの、右にいる男は赤のリボンが目立つニット帽で、左の女はド派手な野球帽で顔を隠していた。
見ることができるのは、揃いも揃って艶やかな唇だけ。
その全体像は恐ろしく怪しく、不気味でありつつも、どこか魅力的であり、超気色が悪かった。
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