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翌日の、夜八時。
期限ピッタリに、亀井夫婦はあのカフェに到着した。昨日と同じテーブルには、あの三人組がいる。
麦わらの男が、亀夫に気付いて招いた。
「おや、亀井さんどうぞどうぞ。ほら、早く座ってくださいな。亀だからって遅くしないでくださいよ」
帽子の下から、いやらしい笑みが覗く。亀井夫婦が席につくのと同時に、野球帽の女が微笑んで言った。
「こんにちは。首を長くして待っていたわ。亀、だけにね」
亀夫の眉間に皺が寄る。女は「あら、亀って意外と首が長いのよ?」とフォローするが、そういう話ではない。
ニット帽の男が、腕を組んで続けた。
「昔話の亀とかけて、十二支の虎とときます」
「その心は!」と麦わら男。
「どちらも、兎の前を行きます」
『アッハハハハハ!』
三人組は声を揃えて爆笑する。亀夫は「何がどうしたんだ」と意味不明に思って呆けてしまったが、ハッと我に返り怒りを表す。
「お、お前ら、ふざけるのなら帰るぞ! この話は止めだ!」
亀井がテーブルを叩いた瞬間、大きな音と共に三人組はピタリと口を閉じた。そして刺さる、周りの視線。
亀夫は思わず激情してしまったことを恥じるように萎縮する。その瞬間を、三人組は見逃さなかった。
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