2人が本棚に入れています
本棚に追加
麦わらの男が言う。
「亀井さん、あなたは今『止めだ』と言いましたね? つまり、今回の話を進めるという形で今日は来た訳だ」
野球帽の女が続ける。
「ではこれから私達の作戦を発表します。その名も、『ランプの魔人大作戦』」
ニット帽の男が問う。
「子の名前は小亀さんですよね? 確か、愛犬を亡くして鬱になってしまったとか? 色々調べさせていただきました」
津波のような三人の言葉に、思わず亀井夫婦は圧倒される。問いにはただ頷くばかりであった。
――ここで、麦わらの男がやはり気持ちの悪い笑みで言葉を吐く。
「……亀夫さん、今回の仕事では、このような状況を駆使します」
訳が分からないという風な亀夫に、麦わらは更に語った。
「あなたは今、私達に怒っていたが、すぐさま仕事の内容を言い出されることで思考がストップしてしまった。これは、まるで典型的な小動物。弱者! 猫、鼠の症状ですよ。思いがけないことがあると、体が動かない訳です」
自分が鼠に例えられたことに怒り、亀夫は口を出そうとする。だが、それは遮られた。
「しかし! この症状はとてもメルヘンに使えるのです! 落として上げる! 思いがけないメルヘン! 切り開かれる希望! それが――『ランプの魔人大作戦』なわけです!」
はつらつとした説明に、麦わらの帽子がふわりと浮かぶ。僅かばかりに見えた右目が、亀井夫婦を鋭く刺した。
「……ということで」麦わらの男は、口調を囁くような口振りに変えた。「明かしましょう。今回の作戦の、全てを」
麦わらの男が指示すると、ニット帽の男はトンカチを、野球帽の女はナイフを取り出した。
そしてそれを持って、亀井夫婦へ近付くと――
最初のコメントを投稿しよう!