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「どうも、初めまして。私は、とある魔人です。あなたの願いを、三つほど叶えにきました」
その説明に納得がいく訳もなく、小亀は立ちすくむばかりであった。しかし。
これは全て、三人組の作戦である。もちろん亀井夫妻は死んでなどいなく、血が出ているように麦わらの男が特殊メイクしただけであるし、鍵は野球帽の女が見事に開けた。
全てが全て、『ランプの魔人大作戦』の経過だ。
そしてここで「父・母を助けて」という小亀の二つの願いをさも叶えたように演じれば、一連の作戦が完成する。
恐らく三つ目の願いは、愛犬の復活だろうと考え、同じ種類の犬はもう用意してある。
全く同じ愛犬ではなくとも、これぞまさにメルヘンであろう。希望を忘れさせない、素敵な事件となる筈だ。メルヘン屋、ここに極まる。
だが――
「ほ、んと……?」
小亀が必死に言葉を紡ぐと、魔人と名乗った男は微笑んで頷いた。
すると、小亀はパァッと満面の笑みを浮かべて願った。
「じゃあ、えっと……。一つ、去年亡くなった犬を生き返して。二つ、新しい父を出して。三つ、新しい母を出して」
男は思わず、吹き出した。
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