第0⃣章 プロローグ

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 全国中学校卓球大会個人戦決勝。  つまり、日本の中学生で一番卓球の上手い選手を決める試合。  「ゲームアンドマッチトゥ赤羽(アカバ)!」  ガッツポーズをする対戦相手を見て、俺はやっと現実を理解した。  ……負けたのだと。  最後の全中。是が非でも優勝したかった。今年はいけると思った。その結果がこのざまである。                                               一セットも穫れず惨敗。俺の記憶上、ストレート負けは初めての経験だった。  悔しいはずなのに、涙が出なかった。それがまた情けなく感じた。  「2」と書かれた表彰台に登り、カメラに向かって笑顔を見せる俺。  自分の気持ちすら表に出せないもどかしさが俺を襲った。  元から俺は争い事は得意では無い。レギュラーになるために他人を蹴落とすなんて考えられなかった。  それでも練習に打ち込んだのは誰も蹴落とさずに実力でレギュラーを穫るため。でもレギュラーを穫った途端に、控え選手達からの陰湿なイジメが始まる。  限界だった。強くなるほど、何かを失っていく気がした。
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