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暦は卯月八日。今日は県立桜羽高校の入学式である。
校長の話=長いの等式は揺るがないものになっているらしく、俺達新入生はグロッキー状態で教室へと向かう羽目になった。
教室は県立高校にしては綺麗で広々としている。慣れない環境に戸惑っている俺達に対して、担任は自己紹介を促す。
「愛内 大河」なんて氏名を授かったお陰で、今まで一度も「出席番号一番」を譲ったことはなかった。
これといった実害があるわけでもないが、新しいクラスで一番最初に自己紹介するというプレッシャーは何度やっても辛いものがある。
クラスの雰囲気が読めなかったら、普通の事を言う。今までの経験に従い、必要最低限のことを言って自己紹介を終えた。勿論、卓球には触れずに。
席に戻ろうとした俺だが、それを担任が許さなかった。今年初めて担任を持ったらしい松本とかいう女教師が、可笑しなテンションでこう切り出したのだ。
「じゃあ、愛内君に質問がある人!」
……静かな教室が一段と静かになる。そんな沈黙を破るかの如く、一本の左腕が高々と舞い上がった。
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