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「卓球については話さないんですか?」
無難に自己紹介を終え、安心していた俺にとってその質問は不意打ち以外の何物でもなかった。
いきなり死亡フラグが立った俺。どうすれば良いか分からず口ごもっている俺を尻目に、「奴」は俺の経歴をペラペラと喋っていく。それらに嘘偽りが無い為、こちらも文句が言えない。
クラスの雰囲気は、最早静けさを通り越している。呆気にとられて目が点になっているクラスメートを眺めるのは少々不思議な感じがした。
暫くの沈黙は担任が次の生徒に自己紹介を促すまで続いた。
席に着こうと歩を進める俺とすれ違う「出席番号二番」は、今まさに俺に死亡フラグを突きつけた「奴」だった。
足早に皆の前に立った「奴」を眺める。身長は150㎝位だろうか? 日焼けしていない白い肌に大きな瞳。私服でいれば小学生と間違えられそうな童顔がそこにあった。
そして一番の驚きは、「奴」の身に着けている制服が「奴は男だ」ということを示していることだった。
「天海 広兎(アマミヒロト)です。趣味は卓球観戦で、尊敬する人は…………愛内 大河君です!」
顔を真っ赤にして言われてもなぁ……。
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